2013年10月27日日曜日

3Dプリンターの普及は、知的財産権のあり方まで変える ? 

3Dプリンターは、あらゆる目的を満たすコンピューティングの新たな 1歩だ。3Dプリンターを取り巻く環境は、ちょうど 1980年代の PC 普及期と似ている。3Dプリンティング テクノロジーはここにきて急激に進化し、プリンターにかかるコストも下がって、家庭やオフィスでの導入が急激に進みつつある。

家庭や職場で 3次元の物体が容易に作れるようになるこの 3Dプリンターは、著作権および知的財産権関連の法体系まで一変させるかもしれない

今や 3Dプリンターはプラスチックはじめ、金属、さまざまな化合物からも造形可能になっている。付属の 3次元デザインソフトのおかげで造形-プリントアウトもたやすい。3Dスキャナーがあれば、自力で設計できない人でも造作なく 3次元データを取り込み、加工できる。

とてつもない可能性を秘めた 3Dプリント テクノロジーだが、これを脅威とみなし、既成の知的財産権保有者を保護するため、あるいは家庭で銃火器を製造させないためといった名目で規制をかけようとする動きも出てくるかもしれない。著作権のデジタル化時代が始まった頃と同様に、3Dプリント テクノロジーが本来の潜在能力を発揮させるためにも、なんらかの法的保護が必要だ。

3Dプリントは、だれでも自分の欲しい物を自由に作れる時代の到来を告げるものだ。たとえば顧客がきわめて突飛な品物を求めている場合でも、その場で顧客の求めに応えることができる。既製品のパーツでは市場の要求に応えられない時でも、比較的低コストで生産することもできる。

従来の特許関連法がベースにしているのは、産業革命以来の古い発想だ ―― つまり重大な知的財産権侵害には多大の投資が必要、というものだ。特許権および特許関連産業も、この「規模の経済」的な古い考え方にもとづく。だが 3Dプリントの場合はこれが当てはまらない。

従来は、商品開発にかかる研究、生産、流通には多大の資本が必要で、大規模侵害を図る側も相当な投資がつきものだった。だが音楽、映画、書籍といった分野のデジタル化が進行した現在、これらの産業構造も様変わりした。生産コストは下がり、瞬時にしかも安価で流通し、個々のニーズに対応できるオンデマンド配信が可能になった。特許権も、同じ道をたどるようになるだろう。


現在は、十分な元手のない個人や小規模事業者が既成の知的財産権を侵害するのは困難だという見方が主流だが、3Dプリンターさえあればこれもひじょうに容易にできてしまうだろう。こうなるとただ規制を強化してもあまり効果はない。見方を変えれば、従来の特許や著作権やドレスコードなどの価値が相対的に下がるということでもある。3Dプリント テクノロジーによって、この流れは一段と加速するはずだ。

どんなテクノロジーでも、それが成功するかどうかの可能性を左右するのは、法律だ。それは 3Dプリントにとっても同じだ。

とにかく、次に挙げるような理にかなった規制法制度が確立しない限り、この「パーソナルな工場」は実現できないだろう。その規制とは、1). 個人的目的で 3Dプリンターを使用する場合は、その個人に知的財産権侵害の責任を負わせない。2). 3Dプリンタブルな 3次元データなどを配布する Webサイト用に、誤解の余地のないわかりやすい規制条項を提示する。3). 現行システムにおける既得権益保有企業が、自家製火器を製造するおそれがあるなどと称して 3Dプリントを排除しないようにすること。

以上のような変化が望めない限り、3Dプリント テクノロジーは旧来のビジネスモデルを守るための闘いという泥沼にはまり込むだけだろうし、誤った法規制がかかれば、3次元クリエイターたちは特定目的の製品以外は造形してはならないなどと言われかねない。