2013年11月2日土曜日

3Dプリンターで住宅問題も解決 ?! 

南カリフォルニア大学大学院で製造エンジニアリング プログラムを主催する Behrokkh Khoshnevis 教授が実用化に情熱を注いでいるのが、住宅をまるごと「造形」してしまう巨大な 3Dプリンターによる無人・全自動のロボット工法だ。

「全世界で満足な住居を持てずにいる人が 10億近くもいます。この現状が貧困、病気、無教育、犯罪、人工過剰など諸問題の温床となっています」。昨年春にカリフォルニア州オーハイで開催された TEDx トークで Khoshnevis 教授はこう訴えた。

Khoshnevis 教授が現在開発中の Contour Crafting は、この人間の「住」問題を根本から解決することを目指すものだ。同教授がプレゼンテーションで披露した動画では、巨大なクレーン状の 3Dプリンターがコンクリートを吐き出してレイヤーを一層ずつ積み重ねて壁を作っていく様子が紹介されている。開発中の住宅建設用 3Dプリンターの試作機では、2,500平方フィート( 約 230平方m )の住宅ならばなんと 20時間で完成するという。ほぼ一日で家がまるごと1軒、完成することになる。

にわかには信じられない夢物語のような話にも聞こえるが、
 Khoshnevis 教授によれば決してそんなことはないという。現に NASA は Contour Crafting に出資して、月面探査を想定したさまざまな構造物が無人作業で組み立てられるかどうか研究してもいる。だが Khoshnevis 教授にとっての最終目標は、やはり「貧困層向け居住区を速く、安全に、効率的にまるごと」提供することだ。

また
 Khoshnevis 教授によれば、この 3Dプリント工法で建てられた建物は直線デザインに限定されず、構造的に堅牢で見た目もよい曲線構造もプリントアウト可能な点を利点として指摘する。住宅デザインも CAD なので簡単にカスタマイズできる。壁用のコンクリート部材は材料削減と軽量化のため中空構造だが、それでも 1万 psi の強度があり、これは従来工法で作った住宅用壁面材よりも強いと教授は言う。

同教授の試算では、この 3Dプリントによる全自動建築は材料費が従来比で 25-30%、建築予算面では 20-25% 抑えることができるが、もっとも大きく削れるのは人件費で、45-50%も節約できるという。そして CO2 削減にもつながり、省エネルギーでもあるとしている。

だが、これは何千何百万という建設労働者が失業することにならないだろうか ?  そんなふうには思わないと Khoshnevis 教授は 1900 年代初めを引き合いに出して言う。当時、人々は農業の機械化によって大勢の農民を追いやり、その結果、経済が破綻するのではないかと恐れていた。たしかに今日、農業従事者は米国総人口の1.5% 未満だが、それでも破綻していないと説明した上で、むしろ Contour Crafting によって新しい仕事が生み出され、とりわけ女性や高齢の働き手にとって新たな受け皿が建設業界にできるとさえ指摘している。

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