2014年2月9日日曜日

人工膝関節も 3Dプリントの時代へ

加齢とともに、腕や足の関節、とりわけ膝の軟骨と靭帯の摩耗による痛みに悩まされる人はたいへん多い。オーダーメイドの人工膝関節開発および製造を主要事業とするマサチューセッツの医療ベンチャー ConforMIS のエンジニアたちは、3Dプリント技術によって患者の膝にぴったりフィットする人工膝関節インプラントを開発した。

同社の「iFit  テクノロジー」は、患者の膝関節の動きを解析した CTスキャン画像から3次元CADデータを起こし、それに基づいて 3Dプリンターで金属製の人工膝関節を製作する。この方法だと従来の既製品よりも患者自身の組織に自然に埋め込むことができ、またそのための外科手術で取り除かれる骨組織の総量も減らせるという。これは執刀する外科医にとっては負担軽減につながり、患者側にとっては、術後の機能回復訓練に要する時間が短縮され、快適な歩行を得られることになる。

このような 3Dプリントによってカスタマイズされた人工膝関節移植を行う外科医の数は増加している。そのうちの1人、フロリダ州パームビーチ郡 JFK医療センターの外科医 Gregory Martin 医博は、次のように語った。[「iTotal」などの ]ConforMIS の製品は、まるで患者自身の組織の延長のようにジャストフィットする。埋め込んだ人工関節がたった 3mmでも大きすぎたりしたら、術後の患者をふたたび痛みで悩ませることになりかねない。医師としては、患者の痛みが軽減され、装着していることを感じさせる違和感がないことが望ましい。人間は皆、それぞれ体型も違うし、体の大きさも異なる。膝関節も同じこと。各患者に最適な膝関節が必要だ」。

それぞれの患者に最適な人工装具の少量生産。こういった医療現場のニーズに、3Dプリントほど完璧なソリューションはないだろう。今後、3Dプリント可能な生物分解性素材の開発が進み、さらに幅広い人工装具生産が可能になれば、この世界経済で成長著しい分野に 3Dプリンティングが及ぼす影響はかなり大きなものとなるかもしれない。病棟に 3Dプリンターが常備され、金属製人工装具や生体組織から生成された代替パーツを日常的に生産する光景が見られる日も、そのうちやって来るだろう。