2014年3月16日日曜日

3Dプリントは Amazon のビジネスモデルをも変えるか? 

Amazon.com は昨年、3Dプリンターストアをオープンさせたが、今月初め、パイロットプログラムの一環として、提携5社とともに3Dプリンターで製造した製品を専門に販売するスペースを試験的に開設した。これは eコマース業界としては初の試みになる。

だが、Amazon の真の狙いはそれだけにとどまらないかもしれない。

3Dプリンティングは小売事業において需要サイドのみならず、供給サイドをも変えつつある。デジタル化する世界においては欲しい商品がない場合にどうするかという概念に変化がもたらされつつあり、同時に増え続ける一方の在庫スペースをどう確保するかという点においても変化はもたらされつつある。

現在のネット通販型小売モデルでは、Amazon のような大規模小売業者は膨大な商品ストックを物流センターに保管し、顧客の注文を受注した時点でできる限り早く、そして価格を抑えて発送する。小売店舗がない分、浮いた経費を物流センターの効率的運営に振り向け、商品販売の利ざやを増やすことができる。

では3Dプリンティング技術を使った小売モデルではどうか。在庫で満たした物流ネットワークを全国規模で展開することも、また「 Drone 」と呼ばれる自前の自動操縦無人ヘリコプターに投資することもなく、注文を受けた商品をただちに顧客に提供できるようになるかもしれない ―― いずれ Amazon は顧客に目的の商品のデザインファイルのみをダウンロードしてもらい、それを顧客の自宅で3Dプリントアウトしてもらう、という販売方法を採用することは、理屈の上ではできない話ではない。そうした顧客は、Amazon の3Dプリンターストアでプリンター本体やフィラメントも購入するようになるだろう。

Amazon はただ商品のデザインファイルをダウンロード販売するだけ、あとは顧客が3Dプリンターで出力して手に入れる、というビジネスモデルは、たしかに興味深いが、現在市販されている廉価な3Dプリンタークラスで出力可能な製品は、せいぜいプラスチック樹脂製の玩具や小物が関の山で、日用品すべてがこの方式で売れるようになるのはずっと先の話だ( 現状では3Dデータファイル作成には高度な専門知識が必要で、3Dプリンターの操作にも相当量の忍耐とスキルが要求される )。

そうは言っても、今日の3Dプリンティング技術の使われ方にはきわめて独創的なものも出現し始めている ―― 航空機や自動車の製造にとどまらず、住宅にまで応用範囲は広がっている。人体の人工器官まで3Dプリントアウトしているくらいだ。これらを考えると、将来 Amazon が有機物であれ無機物であれ、全商品をデザインファイルとしてオンライン販売するという可能性は高いのではないか。かつてインターネットならではのスケールメリットを活かして顧客の買い物の仕方を一変させたように、3Dプリンティング技術を使って買い物のあり方にさらなる変革をもたらすことは可能だろう。

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