2014年9月8日月曜日

シドニー市内の病院で3Dプリント心臓モデル利用準備が進行中

オーストラリア発:シドニー市内の各病院は現在、外科手術用の実物大3次元心臓レプリカを3Dプリンターで作成するための準備を進めている。

同市内のリヴァプール病院およびセントヴィンセント病院では、1年以内にも心臓外科手術でこの新手法が採用される見込み。この技術によって、執刀医にとっても、患者の心臓疾患の状態を以前より的確に掴めるようになる。また手術時間が短縮され、不慮の事故が発生する割合も減少するので、患者の死亡率および医療事故の確率も減る一助になるだろうとしている。

このほど、オーストラリアで初めて3Dプリンターを用いて患者の心臓の実物大モデルを作成したのは、同病院心臓専門医でヴィクター・チャン心臓疾患研究所臨床部の James Otton 氏。「来院された患者さんの心臓を3次元 CT スキャンしてその3Dモデルを作れば、手術と処置の計画が立てられる、というのがそもそもの発想だ」。

セントヴィンセント病院付心臓専門医およびリヴァプール病院の心臓 MRI 部長も務める Otton 医師は、ロボット工学と最小侵襲手術との組み合わせはこれからの心臓手術では一般的になり、事前に綿密にリハーサルを行う計画型外科手術の重要性もさらに増すだろうと述べる。また、心臓は人体の器官中、最も「簡単に」プリントアウトできる臓器ではあるが、「執刀前に行う3次元 CT スキャンとその後の3次元イメージ作成の90%は、ノイズ除去に費やされる。これが難しい」という。

実際の手術にはまだ使用されないが、Otton 医師による同国初の3Dプリント心臓モデルは先週、完成した。また同氏は国内各地の病院で、この3D技術が最も困難な心臓外科手術に応用されるまで1年もかからないとの見通しを示し、3次元心エコー開発の実験施設も開設予定としている。

また Otton 医師によれば「バイオプリンター」のコンセプトモデルも開発中で、実用化されれば実際の正常な心臓と同じ構造を持つバイオ素材から人工心臓をプリントすることも可能になり、外科手術の予行演習や、新人外科医の研修用として使用できるだろうとも語った。

そして同氏は、最終的には、心臓の全ての機能を備えた完全人工心臓がバイオプリントできるようになり、潤沢な資金さえ支給されれば、この分野においてオーストラリアは世界の最先端に立つことが可能だと考えている。ただし、完全な人工心臓が作成可能なバイオプリンターとなると、異なる細胞同士を正常に機能させることが要求されるため、極めて複雑な装置となる。

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