2014年10月13日月曜日

アイルランドの全ての学校に3Dプリンターを ―― LayerLabz の挑戦

アイルランド発:ダブリン工科大学( DIT )でプロダクトデザインを学ぶ Alan Donnelly 氏はある時、廃棄プリンターや PCパーツからでも3Dプリンターが製作できることを発見した。同時にあるビジネスのアイディアも生れた。

「大学では、50万ユーロもする産業用3Dプリンターを使っていたが、これなら1,000 ユーロくらいで製作可能だと考えた」。

同大学卒業後、Donnelly 氏は自身の構想を実現するため、幼馴染みで、ダブリンシティ大学( DCU )でマーケティングおよびイノベーション技術を学んでいた Robert McGrath 氏と共同で起業した。

「まったく独力での起業で、完全な見切り発車。他の大勢の起業家と同じく、ただ良いアイディアがあるというだけで投資を呼び込めるとは思わなかった」。McGrath 氏は Donnelly 氏に、自身の母校が主催する「UStart」という学生起業家育成コンペを紹介した。

「我々が今年度の UStart 最優良スタートアップ8社の1つとして選ばれると、それまで自宅裏の物置だった仕事場が、言ってみれば次の日には広さ 90m² の作業スペースに変わった」と、Donnelly 氏は言う。

Donnelly 氏らの会社はダブリンのリフィー河口に面するリバーサイドエリアの一角に建つビルに入居、Donnelly 氏ら自身も年内まで賃貸料免除のアパートメントを借りることができ、そして起業資金として 5,000 ユーロも支給された。

「無料で家まで借りられるなんて素晴らしい。生活を共にしているから、売り込みのための重要なプレゼンとか準備しているうちに朝になっていた、なんてこともよくある。すべき事は山ほどある。ちょうど子どもが生まれて、ぶじに成長することができるように毎日毎晩、世話を焼くようなもの」と Donnelly 氏。

彼らが起業した LayerLabz は主に教育界を対象とした大型3Dプリンターの製造販売と3Dプリントサービスを行い、また3Dプリンター組み立てワークショップも開催している。少数の学校現場で開発した試作機を使用してもらい、フィードバックに基き、各現場に最適な改善を加える。

教育現場に3Dプリンターを導入する際、彼らが直面したのは安全問題だった。子どもたちを保護するため、開発したプリンターはドア開閉式の完全密封タイプにした。

DCU から初期投資を得て以降、LayerLabz は着実な成長を遂げている。同社はこのほど、アイルランド政府商務庁から補助金5万ユーロを得、リトアニアで先月開催された「Intel Business Challenge Europe 2014 」にて最終選考 24社にその名を連ねた。

「目標は、アイルランド全土の学校に我々の3Dプリンターを届けること。教育分野にこそ、最大の販路があると考える。生徒たちが、信じられないようなすごいデザインの製品アイディアを持っていても、PC のデスクトップのフォルダーに入ったまま眠っているのが現状。せっかく思いついたカタチを現実の製品にできずにいる。それを変えたい」。

現在、LayerLabz はプラスチック樹脂およびゴム状フィラメントによる3Dプリントを提供しているが、金属などの新素材も取り扱えるようにしたいとしている。また同社では、アイルランドの各大学に、3Dプリンティングの研究開発へさらなる投資を働きかけるという。

Donnelly、McGrath 両氏は将来について、アイルランドに本拠を置くグローバルな大企業数社と共に3Dプリントのワークショップを開催したいと意気込んでいる。

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