2014年12月31日水曜日

最先端研究に貢献する3Dプリント

米国サンディエゴ発:3Dプリントは、宇宙最小の構成物に対する新たな知見を科学者に提供してもいる。それはたとえば、タンパク質などの生体分子の構造だ。

このような分子構造モデルは、従来では2次元のコンピューターモデルしか存在しなかった。だが、カリフォルニア州サンディエゴ市ラホーヤのスクリップス研究所分子グラフィックス ラボラトリー( MGL )所長 Arthur Olson 氏に言わせると、「平板な画面上で見るだけの場合と、3次元モデルを手に操作するのとでは、まったく別物の体験だ」。

Olson 所長は、3Dプリントで3次元モデルを作れば、たとえば HIV ウィルスがどのように機能するかが分かるようになるという。同所長は3Dプリントした分子構造モデルを、米国立衛生研究所の「 NIH 3D Print Exchange 」プログラムを介して、他機関の研究者にも提供している。

タンパク質には、多数の原子が含まれる場合が多く、これがタンパク質分子の折りたたみ構造の解明が困難な理由の1つになっている。Olson 所長によると、多くのタンパク質分子が持つ曲がりくねったトンネル構造も、従来の2次元モデルでは全体像が掴めなかったが、3Dプリントモデルならその長さや奥行きがいとも簡単に掴めるようになるとしている。「糸を用意して、タンパク質の3Dプリントモデルのトンネルに通す。両端に印をつけて糸を伸ばせばトンネルの長さが分かる」。

また、3Dプリント技術は完全な人工分子の設計にも応用可能になるかもしれない。タンパク質は分子構造の解明には最適だが、極端な高温や低温、乾燥状態に置かれると不安定になる。米国立ローレンス・バークレー研究所 Molecular Foundry のナノ生体学者 Ron Zuckerman 博士は現在、ペプチドに類似したペプトイドと呼ばれる合成分子の開発に取り組んでいる。ペプトイドはタンパク質に対する感受性を持ちつつ、それを構成する合成アミノ酸にさらに強靭な特性を持たせることが可能となる。

Zuckerman 博士の研究グループが3Dプリント技術を使い始めたのは、それが折りたたみなど、タンパク質の持つ柔軟な構造を直感的に理解できる手段だったからだ。分子どうしが引きあったり反発しあったりする力によって生じる折りたたみは、小型磁石付き3Dプリントモデルとして再現可能であり、異なるタンパク構造の持つそれぞれの屈曲性の再現も、硬度の異なる素材を組み合わせて再現可能できる。

Zuckerman 博士は現在、「 peppytide 」と名付けたタンパク質の3次元モデルを作り、学生の教育用として活用している。たとえば電話機のコードのような α ヘリックス といった、タンパク質の多くに見られる分子構造が現れる様子を再現して見せたりしている。「学生が折りたたむと、すべての磁石が一列に整列して、たちまち安定した螺旋状態になるんだ」。

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