2014年12月30日火曜日

次世代フィラメントは、イカのタンパク質 DNA から作られる? 

米国ペンシルベニア発:現在、FFF / FDM 方式3Dプリントに使用される樹脂素材で環境的に持続可能とされているのが、コーンスターチを原料とする PLA 素材。だがペンシルベニア州立大学の研究者グループが着目したのは、なんとイカの DNA だった。

同大学エンジニアリング工力学を教える Melik C. Demirel 教授らは、海軍省研究事務所( ONR )および陸軍省研究事務所( ARO )から資金援助を受けて、イカの吸盤内部の鋭い輪状歯に含まれているタンパク複合体から新たなフィラメント素材が作れないかと研究を続けている。

Demirel 教授は次のように述べる。「新素材開発でいままで注目されてきたのはもっぱら合成樹脂素材だったが、製品化に時間がかかり、環境にも優しくない」。そこで同教授と化学工学を教える Wayne Curtis 教授が目をつけたのが、イカの吸盤内にある輪状歯のタンパク複合体から取り出した DNA だった。同研究チームは捕獲したイカのタンパク複合体を構成する DNA 配列を調べた結果、サーモプラスチックとして安定した特性を示したのが、この吸盤内部の歯のタンパク複合体だった。そこでこの DNA を取り出して大腸菌に移植し、その大腸菌が生成した樹脂分子を合成してサーモプラスチック素材を作り出した。できあがった新樹脂素材は半透明の物質で、硬素材、可塑性素材を問わず製造可能で、引っ張り強さに富み、濡れても他素材と接着する特性があるという。

そして何より、この新素材は自然のタンパク質ベースなので、医療や美容分野へも安全に応用できるとしている。


3Dプリント素材の市場規模は、2019年までに 10 億ドルを突破すると見込まれている。現在、流通している樹脂素材はほとんど化石燃料由来なので、生物由来の持続性のある素材が優位に立つのは間違いないだろう。プリントアウトに失敗した製作物やプラスチックごみからのリサイクルという手段もあるが、環境負荷の少ないフィラメント素材の安定供給を確保すべく、研究者は新素材を生成する新しい方法を模索し続けている。

Demirel 教授は次のように述べている。「次世代素材を決定づけるのは、分子配列、分子構造、分子特性といった分子の構成にこそある」。

参照元記事1
参照元記事2