2015年4月4日土曜日

3Dプリントの大動脈レプリカで救われた女子高校生

米国ミシガン州発:17 歳の高校生 Ariana Smith さんの心臓に重大な欠陥が見つかったのは今年1月のこと。母親の Jacqueline Foster さんは以前から、娘の心臓の雑音に気付いていた。そこで Foster さんは、他の3人の子供達と共に心臓超音波検査( 心エコー )を受けさせた。その結果、Ariana さんの胸部大動脈には将来、重大な結果を招きかねない大動脈狭窄が起きていることか判明した。彼女の胸部大動脈にはゴルフボールに匹敵する大きな瘤ができていた。

デトロイト医療センター付属ミシガンこども病院の心臓専門医 Daisuke Kobayashi 医博は同病院循環器小児外科医 Daniel Turner 氏と緊密に連携を取りながら、3Dプリントによる胸部大動脈の実物大レプリカを使用した血管拡張術を行った。このような3Dプリントレプリカによる外科手術は、ミシガン市では今回が初めてとなる。

この3Dプリントモデルは、3Dプリントの医療分野の応用では世界的に実績のあるベルギーの Materialise のプリマス事務所を介して、同社の提供する3Dプリントモデル作成支援ツール Mimics® Innovation Suite を使用し、Ariana さんの心臓の CT スキャンデータから作られた。Turner 氏によれば、この3Dプリントモデルのおかげで、瞬間的に心臓を止めるといった高リスクの外科手術をせずに済んだという。「従来、10 代の若い胸部大動脈瘤患者に行う外科手術には高いリスクが付き物で、合併症の恐れがあった」と Kobayashi 氏。代わりに同氏チームが用いた方法は、特別なライニング加工を施されたステントによる血管拡張術で、入院期間はたったの1日で済んだ。おかげで Ariana さんは楽しみにしていたダンスパーティーにも出席できた。

Turner 氏は次のように言う。「彼女の大動脈狭窄の状態は複雑で、3次元で再現しない限りイメージ化するのが難しかった。この実物大レプリカを手で持った時の感触が大変役に立った。実際の手術手順を具体的にシミュレートでき、より安全な施術が行えた。彼女には今後、とくに外科手術は必要ないだろう。何よりも重要なのは、3Dプリントテクノロジーを使用して得られた今回の経験が、今後の同様な外科手術を安全に行えるようにしてくれたこと。これは始まりに過ぎない」。

Materialise では今月 17 日、ニューヨーク市内で開催される「3Dプリント ウィーク」の「 Inside 3D Printing 」カンファレンスにて、同社 CEO Wilfried Vancraen 氏が今回のミシガンこども病院での成功例を基調講演で取り上げる予定だ。