2015年9月7日月曜日

古代角笛の失われた吹き口を3Dプリントで復元、演奏も

オーストラリア・キャンベラ発:オーストラリア国立大学アジア太平洋カレッジ( ANU Asia-Pacific )考古学博士課程に在籍する Billy Ó Foghlú 氏はこのほど、古代の角笛の吹き口を3Dプリントによって再現し、完全な形での角笛のレプリカ製作に成功した。

 Ó Foghlú 氏によれば、この角笛は青銅器-鉄器時代のもので、欧州全土、特にスカンディナヴィア半島で多く出土している。同氏が注目したのが、アイルランドで出土した出土例の少ない角笛の遺物で、一様に吹き口( マウスピース )が欠けていた。これが長年、研究者にとって謎だった。理由の1つとして、所有者の埋葬儀式で武具など他の貴重品と共に分解されて副葬品として埋められたという慣習があったためと考えられている。

20 世紀初頭、アイルランドのミース州ナヴァンで出土した「ナヴァンの槍石突( B.C. 2世紀頃 )」も、そんな「武具」遺物だと考えられてきた。しかし Ó Foghlú 氏は、実は石突ではなく、本来は失われたと思われてきた「吹き口」ではないかと推測した。

そこで同氏は精密な計測データを基に3D CAD データを起こし、それをキャンベラ市内の3Dプリント プロバイダーおよび3Dプリントスタジオの協力を得て 3D Systems の光造形3DプリンターProjet 」で復元し、さらにブロンズ仕上げを施して本物に忠実なレプリカを完成させた。

この吹き口を角笛レプリカ本体に装着して吹いてみると、「たちまち楽器に生命が戻った」。

こうして、以前は音楽に乏しい暗黒時代のように考えられていた青銅器-鉄器時代のアイルランドには、このような管楽器による音楽が奏でられていた可能性が高まった、としている。「先史時代の角笛は単なる狩猟ホルンではなく、注意深く組み立てられた立派な楽器であり、当時の文化において音楽が重要な役割を果たしていたことは明らかだ」。

 Ó Foghlú 氏は次のように述べる。「ツタンカーメン王墓にも、トランペットに似た古代楽器が副葬品として出土している。先史時代スカンディナヴィア、スコットランド、ヨーロッパ大陸にも同様の角笛が墓から出土しており、それらの古代楽器にも不可欠な構成部品として吹き口はついていた」。



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