2015年10月25日日曜日

バイオプリント新技術「 FRESH 」で、将来は MakerBot でも動脈や心臓組織が作成可能になる? 

米国ペンシルベニア州発:カーネギーメロン大学材料工学部材料科学および生体工学科准教授 Adam W. Feinberg 氏率いる研究者チームはこのほど、コラーゲンやフィブリン等のタンパク質から心臓や冠状動脈といった生体組織を出力する新たなバイオ3Dプリント技術を開発したと、現地時間 10 月 23 日付の学会誌 Science Advances 電子版に発表した。この研究成果は Creative Commons に準拠した形で無償公開されている。

Feinberg 氏らの発表した論文によると、今回開発した新方式「 FRESH [ freeform reversible embedding of suspended hydrogels ]」は、コラーゲン混合液から粥状の粘性を持つ半固体支持層を作成し、その中に3Dプリンターで液体分子を押し出し、化学物質や光線に曝して様々な粘性を持つゲルと結合させて人工組織を成形した。粥状支持層は人間の体温に近い温度に達すると、内部のゲル組織を残して自然溶解する。

この方式の利点は、作成したソフトマター組織が固結前に崩れる失敗がないことだ。Feinberg 氏は、「コラーゲン、アルギン酸塩、フィブリン等のソフトマターから、冠状動脈や白色レグホーン[ ニワトリの品種名 ]の胎生心臓などを MRI 画像や3Dイメージングを使用して、従来方式では実現できなかった高解像度での3Dバイオプリントが可能になった」と述べている。

Science Advances 電子版では、先月もソフトマターを使用した3Dバイオプリント技術を開発したフロリダ大学航空宇宙工学科助教 Thomas E. Angelini 氏らの研究グループによる研究成果を発表している[ → 既報記事 ]が、Feinberg 氏らの方式で画期的なのは、MakerBot 等の一般コンシューマー向けデスクトップ型3Dプリンターとオープンソースで従来よりはるかに低コストでこのような人工組織が作成可能になったということだ。バイオプリンティングは今後、大きな成長が見込める分野だが、市販3Dバイオプリンターのほとんどで価格は 10 万ドル以上と非常に高額で、操作には高度な専門知識も要求される。

次に Freiberg 氏が目指すのは、今回開発した FRESH に実際の生体組織を投入して人工組織が作成可能かを検証することだ。これまでのところ、単純な筋肉組織細胞シート内での細胞の生存は確認済みだが、今回発表の実験では、生体組織は投入されていない。今回の成果は、その外側の組織を FRESH でそっくり再現する段階に留まっている。

Feinberg 氏は寄稿論文を無償公開したことについて、「他の方も我々の開発した新方式を実際に試してほしいからだ。こちらがまったく思いもよらなかった方法が、そこから出てくるかもしれない」。



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