2015年11月7日土曜日

一部の3Dプリント製品はゼブラフィッシュに有害と研究者が発表

米国カリフォルニア州発:カリフォルニア大学リバーサイド校( UCR )研究者グループは現地時間 11 月 4 日、一般コンシューマー向け3Dプリンターで出力したオブジェクトに魚類の胚細胞に有害な物質が含まれていると Environmental Science and Technology Letters 電子版に発表した。

同大学内ボーンズ・カレッジ・オヴ・エンジニアリング( BCOE )生体工学科助教 William Grover 氏は次のように警告する。「このような3Dプリンターは、言わば箱に入った工場だ。工場には法規制がかけられ、一般家庭を工場にすることなど考えられない。だが我々は3Dプリンターという工場を、トースターと同じ感覚で自宅に持ち込んでいる」。

Grover 助教らのグループは、3Dプリンターを FDM/ FFF 方式と、光硬化液体樹脂を使用する「光造形( SLA )」方式とに分けて検証した。

Grover 助教によると今回の検証実験は昨年、同助教が研究用に3Dプリンターを1台購入したことがそもそもの始まりだったという。同助教率いる研究者グループの1人で大学院生 Shirin Mesbah Oskui 氏がゼブラフィッシュ調査ツール作りに3Dプリンターを使用したところ、プリントアウトされたオブジェクトに曝されたゼブラフィッシュの胚細胞が死んだことに気づいたからだ。

そこで両氏は3Dプリンターで造形した製品の毒性について検証実験を行った。実験に使用したのは FDM タイプが Stratasys の「 Dimension Elite 」、SLA タイプが FormLabs の「 Form 1 + 」で、共に直径1インチ[ 2.54 cm ]の平皿状のオブジェクトを出力した。それをゼブラフィッシュの胚細胞が入ったシャーレに移し、胚細胞の生存率と孵化率、発育異常を調べた。

その結果、FDM 方式3Dプリンターで造形した平皿に曝されたゼブラフィッシュの胚細胞はそうでない胚細胞と比べて生存率が若干低下した。一方、SLA 方式3Dプリンターで造形した平皿に曝された胚細胞の生存率は著しく低下した( 3日目に半数以上が、7日目には全ての胚細胞が死滅した )。辛うじて孵化した稚魚も、SLA 方式3Dプリンターの造形物に曝されると、発育異常率が 100 % だったという。ただし SLA 方式の場合はオブジェクト取り出し後に1時間ほどの UV 照射によって毒性が抑えられることも判明している。Grover 助教は、いずれは米国環境保護庁による有害物質規制法( TSCA )のような何らかの法規制の対象になるだろうとしている。

Grover 助教らによると、今後は3Dプリンターに使用される素材の毒性について、詳細な調査を行う計画だ。

Grover 助教は、「私も含めて多くの人が3Dプリントに興奮を覚えているが、ここで一歩下がって、プリントアウトされる素材がどの程度安全なのかを問う必要がある」と述べている。




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