2016年2月19日金曜日

大型人体組織や器官の複製も可能にする新たな3Dバイオプリント技術を開発

米国ノースカロライナ州発:ウェイクフォレスト大学付属バプティスト メディカルセンター再生医療研究者グループはこのほど骨や耳などの人工器官 / 組織を作成可能な新たなバイオ3Dプリント技術を開発し、外耳、骨、筋肉組織の一部の作成に成功したと発表した。この研究成果は現地時間 2 月 15 日付専門誌 Nature Biotechnology 最新版に掲載された。

掲載論文によると、新たに開発したバイオ3Dプリント技術で作成したこれらの人工生体組織をラットやマウスに移植したところ、血管網を持った完全に機能する安定体として定着したとしている。

同研究者グループを率いるウェイクフォレスト大学付属再生医療研究所長で再生医療の世界的権威 Anthony Atala 医博によると、今回同グループが独自開発した「統合型組織 / 臓器プリンター  Integrated Tissue-Organ Printer( ITOP )」によって従来のバイオプリンティングでは困難だった大きな人体組織や器官の「複製」が可能になるとしている。同グループによるとこの ITOP システム開発には 10 年以上かかった。

Atala 医博は次のように述べている。「従来の組織工学では毛細血管網は再生できなかったため、自然成長限界点 100 - 200 µm( 約 1 - 2 mm )を超える人工組織や細胞はほとんどが死滅した。これに対して我々が新たに開発した ITOP は極小流路も同時に作成し、血液や栄養がこの人工毛細血管網を通じて組織内部に運ばれるため、この限界を克服することができた」。

研究者グループによると、この ITOP と CT / MRI 画像とを組み合わせれば、理論上はどのような人体組織 / 器官であっても複製可能だとしている。ITOP プリンターに生体インクとして使用されるヒドロゲルにはカプセル化した細胞組織が埋め込まれ、細胞成長に最適化されている。この生体インクと同時に、極小流路構造を作成する機械的安定性に優れた生分解性ポリマーが滴下され、一時的な細胞組織外層も形成する。ヒドロゲル内の細胞組織はプリント作業中に破壊されることはなく、Atala 氏によると ITOP では従来方式と異なり足場材の組織も同時に作成可能だという。

今回の研究には米国国防脅威削減局( DTRA )からと、米国陸軍医療研究 / 資材統合本部付属遠隔地医療 / 先進技術研究センターおよび米軍再生医療研究所から研究資金の拠出を受けている。今回開発された ITOP は、将来的には負傷兵等の治療への導入も期待されている。

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