2016年2月22日月曜日

脊索腫患者への3Dプリント人工骨移植に世界で初めて成功

オーストラリア発:脊索腫は現在、極めて治療困難な悪性腫瘍の1つとも言われ、頭蓋骨および脊椎に発現する。3Dプリントはその脊索腫治療の助け舟になるかもしれない。

シドニー市のプリンス・オブ・ウェールズ病院外科医チームは昨年末、この悪性腫瘍を発症した男性患者に対し、世界で初めて脊椎骨の3Dプリント インプラントの移植手術を行い、手術は成功した。

Drage Josevski 氏は後頭部から首にかけての脊椎骨2枚にこの悪性腫瘍が見つかった。診断に当たった Ralph Mobbs 医博によれば、このまま放置した場合、Josevski 氏は手足の身体機能が徐々に奪われ、呼吸もできなくなってしまっただろうという。

Mobbs 医博はまず腫瘍に浸潤された部位の脊椎骨を完全に取り除き、除去部分に3Dプリントで製作したチタン製人工脊椎骨を移植した。そこはちょうど頭蓋骨と頚骨との接合部分だ。この移植手術は開口状態で行われ、また頭蓋骨と頚骨とを切り離して腫瘍部分を除去するという非常に困難なものであったため、延べ 15 時間もかかる大手術だった。

Josevksi 氏は幸いな事にこの危険な手術から無事、妻と愛娘の許に生還した。Mobbs 医博は次のように述べている。「 15 時間かかって複雑な腫瘍部位を除去し終えた後、3Dプリントのインプラントがぴたり適合し、腫瘍のあった部位が元通り再建できたのは素晴らしい経験だった」。

過去のチタン素材の3Dプリント インプラント / 人工装具の成功例と同様、今回のケースも患者本人の頚骨 CT スキャンデータに基いて人工脊椎骨が製作された。製作を請け負ったのはメルボルン市に本拠を置く医療機器ベンダー Anatomics Pty Ltd 。

Josevksi 氏は手術中に長時間に渡って口を開けていたためか、食事と会話の際に予期せぬ後遺症にしばらく見舞われたが、半年以内に回復する見込みだ。同氏の娘によると、「父は私の結婚式に出席して、孫の成長を見ることができると考えるだけでとても楽しい」そうだ。

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