2016年3月25日金曜日

癌細胞生育環境を再現可能にする新しいヒドロゲルを開発

オーストラリア・クイーンズランド州発:クイーンズランド工科大学付属健康 / 先端医療研究所( IHBI )の Dietmar W. Hutmacher 博士ら4名からなる研究者グループはこのほど、人体組織の3Dバイオプリントに広く使用されているヒドロゲルを癌細胞組織の3Dモデルとして活用可能にする技術を開発し、学術誌 Nature Protocols 最新号( April 2016,  Volume 11  No 4,  pp. 727 - 746 )に発表した。

同研究者グループによると、今回開発したのはゼラチンメタクリロイル( GelMA )をベースとした生体適合半合成ポリマー。Hutmacher 博士によると、軟骨など人体組織と同様の生体組織立体モデルを作成できるヒドロゲルで、癌細胞の生育する微小環境を人工的に再現できたとしている。このヒドロゲルを3Dバイオインクとして活用すれば、化学療法選択の際、どの手法がその患者の症例にとって最適かをわずか1、2週間という極めて短期間で、しかも非常に安価にシミュレートすることが可能になるという。言わばオーダーメイド癌治療を可能にする技術だ。

同博士は次のように述べている。「ヒドロゲルは全世界の何万という研究者が日常使用しているバイオ素材。ゼラチンは人体内で最もありふれた結合組織のコラーゲンからできている。我々はこのゼラチンと化学的安定性のある合成素材とを組み合わせて癌組織を培養する立体微小環境を作成した。このヒドロゲルは非常に再現性に優れているので、世界中の研究者が作成可能だ。バイオファブリケーションは未来の医療だ。この学問は化学、物理学、生物学、医学、ロボティクス、コンピューター科学など多岐分野にまたがる理解が要求される。我々はこれら各分野で修士号取得を目指す学生を歓迎する」。

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