2016年6月24日金曜日

無重力状態での3Dバイオプリントに世界で初めて成功

米国インディアナ州発:長年 NASA の業務請負を担ってきた航空宇宙および医療機器製造の Techshot Inc. は現地時間 6 月 14 日、世界で唯一の無重力状態をシミュレート可能な民間航空機「 Zero G 」内で、人間の幹細胞から心臓および血管組織の一部を3Dバイオプリントすることに世界で初めて成功した。

同社によると、今回の実験に使用した3Dバイオプリンター試作機はバイオプリンティングの nScrypt, Inc. とバイオインク製造プロジェクト Bioficial Organs と共同開発したもの。実験はメキシコ湾上空高度3万フィートで実施された。

「 Zero G 」がシミュレート可能な無重力状態は1回当たり最大 30 秒しか継続せず、試作機が作成できるバイオプリント体も必然的に微小組織に制限されるという欠点はあるものの、同社チーフサイエンティスト Eugene Boland 氏によれば、「3Dプリンターは稠密な組成の立体物作成は得意だが、そうでない大きな中空構造を持つ物体、たとえば心臓などの作成は苦手。地球重力の影響を受けない宇宙空間でバイオプリントを試みれば、作成物が重力に引っ張られて崩壊するといったこともない」ので、極めて短時間での実験だったとはいえ作成成功を確認できたことは非常に大きな成果だったとしている。

また宇宙空間での3Dバイオプリントのメリットとして、「 地上でのバイオプリントではどうしてもバイオインクに含まれる化学物質が多くなる。その点、宇宙空間なら足場材などの補強措置を取ることなく、健康な細胞組織の生成が可能になる( Bioficial Organs CEO の  Stuart Williams 氏 )」。

同社によると、今後も無重力下でのバイオプリント作成試験を続け、詳細なデータを収集した上で 2017 年 1 月までに3Dバイオプリンター実用機を完成させ、翌 2018 年頃を目処に ISS に搬入して宇宙空間で3Dバイオプリント実験を始めたい考え。ISS で稼働予定の3Dバイオプリンター実用機は今回の試作機より更に小型化し、耐久性能も向上させたいとしている。



参照元記事1
参照元記事2