2016年8月26日金曜日

3Dプリントモデルによる舌癌切除術に世界で初めて成功

インド・カルナータカ州発:現在、インド国内では噛みタバコなどの習慣に起因する口腔癌の罹患率が急増している。全癌患者のうち、舌癌などの口腔癌患者はじつに四割にも上ると言われる。

バンガロール市保健グローバル癌センターの外科腫瘍学チームはこのほど、世界で初めて複合フレキシブル素材による3Dプリントモデルに基づく舌癌切除と再建手術を行い、見事に成功した。

同癌センターによると、長引く口内炎に悩まされているというインドール市内に住む 53 歳男性が同センターを訪れた。男性は 2 年前、舌悪性腫瘍の手術を受けていた。検査の結果、男性は舌の広範囲を癌組織に侵されていることが判明した。

執刀医チームを率いた Vishal Rao 医博は、従来の切除術では舌を丸ごと取り去ることになり、この男性患者の QoL 低下を懸念した。

そこで Rao 医博らは、ムンバイ市内の医療3Dプリント技術のスタートアップ Anatomiz3D LLP に対し、この男性患者の MRI 画像の DICOM データから精密な3次元等倍モデル製作を依頼した。

Rao 医博の話「舌および癌細胞の3次元等倍モデルを舌部分を茶色に、癌部分を青色に色分けして作成してもらった。執刀医チームはこのモデルを見ながら癌組織の位置、深度、大きさなどを正確に把握することで最適な癌切除術のプランを立てることが可能になり、また癌切除後、大腿筋組織を使用して忠実な組織再建を行うことができた」。

Anatomiz3D によると、実際の3次元モデル作成に当たって、Materialise の開発した医用画像処理専用ソフトウェアMimics for Research 」を使用した( 同ソフトウェアは米国食品医薬品局[ FDA ]および CE 準拠 )。

3Dプリント3次元モデルをこのような癌切除術に援用することは、外科医にとって大変なメリットをもたらす。従来の2次元画像による診断では不可能だった癌組織の全体像を可視化できるだけでなく、組織再建術に必要なデータも得られる。そしてこれは患者本人にとっても、嚥下能力や発話能力といった既存能力を損なうことがないというメリットをもたらす。また、このような3次元モデルを使用して患者にこれから受ける手術について説明すれば、患者側の理解も得やすく、術後のリハビリ計画も立てやすい。実際、外科医によると、MRI 画像のみで病状の説明をしても、患者側に全てが伝わっているわけではないという。

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